モダナイゼーションを成功に導くためには、リスクを軽減しながら、かつコストを抑えたマイグレーションを実施しなければならない。それには考慮すべき8つのポイントが存在する。前回は方法論について紹介した。今回は、8つのポイントの中でもコスト削減に最も効果がある「棚卸し」について考えてみる。
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第2回で指摘したように、マイグレーションでトラブルを起こす最大の要因は、プロジェクトが進み始めてから“想定外”の要件や見落としに気づくことである。これを防ぐのが事前の「棚卸し」だ(図1)。棚卸しがどこまで徹底できているかが、マイグレーションの費用に大きなインパクトを与える。
ITにおける棚卸しでは、端末などのハードウエアを含めた“広義の棚卸し”がある。だが以下では、「マイグレーションの対象になるアプリケーションの範囲を見極める」ための“狭義の棚卸し”について説明する。
何を移行し、何を移行しないかを事前に見極める
棚卸しで重要なことは、いかに必要がないアプリケーション資産を取り除くかだ。実際の引越でも、新しい家に引っ越してから荷物を整理するよりも、引っ越す前に荷物を整理し、身軽になってから引っ越すほうが無駄がない。これは、マイグレーションでも変わらない。
アプリケーション資産を棚卸しせずにマイグレーションを実施してしまうと、既に使っていないアプリケーションもがマイグレーションの対象になり、「必要のない設計」「必要のない開発」「必要のないテスト」が発生する。苦労してマイグレーションしたにもかかわらず「結果的に無駄な作業だった」ということを徹底して排除する必要がある。
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