月額定額で聴き放題の音楽配信サービスを契約したのを機に世の中を見渡してみると、様々なものがソフトウェアによるサービス化へ向かっていることを、あらためて強く感じた。今後、個人的なハードウェアとしての財の価値は薄れていき、財は公共で保存され、ソフトウェアに価値を求め生活を楽しむためのサービスに消費が向かうことだろう。
最近、スマートフォンを更新した際のこと。音楽のライブラリを自動的に移行できなかった。手動で移行すればいいのだが、その手間や時間がなかなか取れない。移動中に音楽を聴きたいので、これを機会に月額定額で聴き放題の音楽配信サービスを契約した。
4万曲が聴き放題という謳い文句だが、最新アルバムやマニアックな曲は無かったりする。その場合でも曲ごとに有料でダウンロードできるから大きな不自由はない。CDアルバムを月に1枚くらい買っているので、実体感のあるジャケットデザインを眺められない不満はあるが、「聴く」という目的に対するコストとしては却って安上がりである。
結果として、快適である。コンポステレオのCDプレーヤーを使わなくなり、ブルートゥース接続のスピーカーが活躍し出した。今までにコレクションしたCDアルバムは年々増えるばかりで収納スペースを占領している。これも改善されそうだ。
音楽の媒体はレコードやオープンリールからカセットテープ、CD、MD、そしてメモリーカードへと変遷しながら、今や圧倒的にスマートフォンで持ち歩かれるようになった。アナログのレコードに特有の音質とアーカイブと郷愁を求める心は容易に消えないにせよ、デジタル音源のCDやMDといった媒体はどんどん消滅していくことだろう。MDプレーヤーはもう店舗では買えず、中古品でも買うしかない。媒体と共にハードが消えていく。
ソフトウェアの台頭とサービス
音楽に限らない。書籍もデジタルで読む機会が増えている。旅行の手配やチケットの手配で店舗に行くことはなくなった。買い物の多くをインターネットショッピングで賄っていることにも、改めて驚く。レストランの予約も店に電話しなくなった。リムジンバスもタクシーも当たり前のようにスマートフォンから予約している。店舗や窓口に出向かなければならないのは、今や旧態依然の銀行と行政サービスくらいである。これらのことは筆者だけではないはずだ。様々なものがソフトウェアによるサービス化へ向かっている。
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