[ザ・プロジェクト]
実践して初めてわかるコンテナの価値と導入難度―ぐるなびのプロジェクト詳細
2018年7月6日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)
ネット企業にとどまらず、今後は一般企業にも普及が見込まれるコンテナ技術。しかし、これまでのシステム開発・運用技術とは異なる側面も多いだけに、おいそれと採用しにくいのも事実だろう。そんな中で、ぐるなびは開発スピードと柔軟性の向上を目的にコンテナを採用して、アプリケーション稼働基盤を刷新した。導入までの道のりを、刷新プロジェクトを率いた担当者に聞いた。
顧客あるいはパートナーに提供するサービスやアプリケーションをどれだけ迅速に機能強化できるか。これは今日の企業にとって生命線の1つだ。数回利用してサービスに改善が見られなければ、別のサービスに移行し、2度と戻ってこないようなことが起こり得るからである。
例えばレストランの検索・予約サービス。ぐるなび、食べログ(カカクコム)、ホットペッパーグルメ(リクルート)、一休.comレストラン、Yahoo!ダイニング、Rettyなど、新旧サービスが日々しのぎを削っている。
ぐるなびはこの分野の先駆的存在だ。1996年に開設された約50万店の飲食店情報を掲載した「ぐるなび」をはじめ、接待・会食向けの店を探せる「こちら秘書室」や「接待の手土産」といったレストラン検索・予約サイト/サービスを運営する。加えて、決済や予約管理などを行う外部とのサービス連携=飲食店のIT化支援も行っている(図1)。2018年3月期の売上高は362億2600万円で、国内市場を代表する大手プレーヤーだ。
そのぐるなびが2018年3月、競争に抜きん出るための“武器”として、コンテナを採用しアプリケーション稼働基盤の刷新を敢行した(関連記事:ぐるなびのOpenShift移行事例に見る「リフト&シフト」のポテンシャル)。
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ぐるなびが選んだコンテナはレッドハットの「Red Hat OpenShift Container Platform」である。同製品は、欧米では数年前から、航空や鉄道などの公共サービス、銀行や証券などの金融関連、IT化が進む自動車メーカーなど一般企業の採用が進んでいる。日本では今のところIDCフロンティアやぐるなびのようなIT企業、ネット企業に限られるが、マイクロサービスやコンテナ技術(関連記事:改めて「マイクロサービス」を紐解いてみる)はこれからのアプリケーション開発に必須のアプローチと見られるようになってきている。
開発スピードと柔軟性を併せ持つアプリ基盤を目指す
コンテナの採用はどのような過程を経て行われたのか。ぐるなびでOpenShift Containerの導入を推進した小川保法氏(企画開発本部開発部門インフラストラクチャーサービスセクション クラウドアーキテクチャグループ)と湯瀬淳也氏(同部門技術・開発推進セクション アーキテクトグループ シニアリーダー)に、導入の経緯やポイントを聞いた(写真1)。
――ぐるなびの開発人員やOpenShift Container導入以前のシステム環境を教えてください。
開発部門の全体でエンジニアは250人規模で、うち20人がITインフラを担っています。ITインフラについては、サーバーをVMwareで仮想化し、サービスごとにLAMP(Linux+Apache+MySQL+PHP)環境を用意してアプリケーションを稼働させています。DBサーバーやストレージはサービスごとではなくて共有です。特に、ストレージは高価なので。
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