[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

「私作る人、僕食べる人」からの脱却、多重下請構造から協業へのシフト

ふくおかフィナンシャルグループ ビジネス開発部 部長 河﨑幸徳氏

2022年7月13日(水)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、ふくおかフィナンシャルグループ ビジネス開発部 部長 河﨑幸徳氏によるオピニオンである。

 ベテランの方なら、題名のフレーズを覚えている方も多いと思う。1975(昭和50)年に放送された、ハウス食品工業が発売した即席ラーメンのテレビCMである。女性が料理をして男性が食べるという、料理して食事する過程の役割分担を表現している。ところが、このフレーズが性別役割分担の固定化につながるとして女性団体から抗議を受け、約2カ月で放送中止となった。

 筆者はバリバリの昭和世代なので、この役割分担には特に異論はなかった。しかし最近の若者は性別などを気にすることなく、一緒に食べたいものの選定から調達、料理・後片づけに至るまで、お互いに協業して作り上げているそうである。筆者の子供達もそのとおりの行動をしており、「我が息子は九州男児なのに情けない……」と思う半面、「自分の感覚は古いのでは…」と自戒する次第である。

 役割分担という意味では、2000年前後に情報システム部門を襲ったのが、開発・運用業務のアウトソーシングや外注化である。システムの企画から開発、運用に至る業務をフェーズで区切り、自社で保有・実行するのは企画業務のみ。開発や運用は、単価の安い外部の専門業者に委託(丸投げ)するというもので、戦略的アウトソーシングとしてもてはやされた。「餅は餅屋に」という美辞麗句もあった。

 もちろん情報システム部門から仕掛けたものではなく、ITコスト削減やIT人材に関わる問題の回避のために経営企画部門などから仕掛けられたものである。アウトソーシング受託で安定収益を得たいベンダー企業の働きかけもあった。

 そうした中で、従来、企画から開発・運用を同じ会社の従業員が協業して行っていた業務が、受注側と発注側という上下関係に変わってしまった。なかには、企画も含めた業務すべてをアウトソーシングしてしまったり、情報システム子会社を売却してしまったりした会社もあり、役割分担は固定化した。実は、筆者も経営企画部門でアウトソーシングを推進した側であったので、今振り返ると心境は複雑である。

ITアウトソーシングの大ブームに、どのユーザー企業も飛びついたが……(画像:Getty Images)

 以前だったら下手なシステムを企画すると、開発部門から「こんなシステム作ってどうするつもり? だれも使わないよ」なんて辛口な意見も帰ってきて見直しが行われたものだ。それができたのは同じ会社に所属し、システムに求められている役割や目的を共有して一緒に構築しているがゆえだった。それがアウトソーシングや外出しした途端に、お客様からの発注は受注側にとっては美味しい案件であり収益源に変わる。下手なシステムなら改修依頼を見込めるから、言われたままに作る形へと変わっていった。

 加えて発注側では、システムの開発や運用をまともに経験したことがない人員が増加。いわゆるITスキルの空洞化が広がっていった。会社が置かれている環境に変化がなく、システムを大きく変える必要がない時代なら、それでも大きな問題ではない。しかし2010年前後を境にしたITの急激な革新により、技術は遙か先に行ってしまい、システム化のニーズや発想が追いつかない時代が到来してしまった。

 今日、ITやデジタル技術は、業務効率化を越えて経営や事業運営の武器になった。他と競争し、顧客価値を創出し、あるいは事業を変革するために、どんな企業にとっても欠かせない存在である。それにもかかわらずITやデジタル技術を駆使する人材が育っていない。日本全体のデジタル化も諸外国に比べて遅れが目立ち、社会的な課題になっているのが現状だと言える。企業に関して言えば、特にITをアウトソーシングした企業に、その傾向が多い状態だと思われる。

●Next:社内でデジタル人材を育成する方法は1つ!

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