[CIO INSIGHT]

先駆的5社のCIOが語るSaaS/クラウドへの移行で得た「果実」と「教訓」

Send in The Cloud By Tony Kontzer

2009年3月12日(木)CIO INSIGHT

SaaSやクラウドコンピューティングの世界に果敢に飛び込んでいった、米企業の5人のCIOたちの取り組みを紹介する。単純なインフラ管理から解放されたIT部門が、自社の利益に直結する分野に注力できるようになるなど、具体的なメリットを享受する企業が出始めている。一方で、突発的なパフォーマンス低下など、発展途上であるがゆえの技術的な問題を指摘する声もある。(翻訳 : 古村 浩三)

ユーザー企業が、サービスプロバイダーの所有するインフラやアプリケーションにアクセスし、あたかも電気やガスといったユーティリティ感覚で使用するSaaSやクラウドコンピューティング。企業のIT戦略の中で、実際に採用されるようになるのには、何年もかかるものと思われていた。だが今日では、新しい試みとして積極的にSaaSやクラウドの活用に乗り出すユーザー企業が急増しており、従来の伝統的なITインフラに代わるものとしての評価を急速に高めつつある。

CIO INSIGHTでは、実際にそうした世界に飛び込んだ先駆的な5社のITエグゼクティブに取材した。彼らがSaaS/クラウドに向かった理由や、移行の際に避けては通れないセキュリティ問題への対処方法を見ながら、その移行の可能性を検証しよう。

表 SaaSやクラウドコンピューティングに果敢に挑んだ5社と取り組みの概要
  ユーザー企業名 概要 使用したサービス名
事例(1) インテバ・プロダクツ(自動車内装品製造) 事業部門の分離独立に伴うIT環境の整備で、電子メール、ERPシステムにSaaSを利用 電子メールにはUSA.NETのサービス、ERPにはプレックス・システムズのサービスを使用
事例(2) オーサー・ソリューションズ(オンライン出版社) システム統合のため、SaaSプラットフォーム上でERPシステムを稼働 セールスフォース・ドットコムのSaaSプラットフォーム「Force.com」
事例(3) ESPNデジタルメディア(電子メディアサービス) スポーツ専門サイト「ESPN.com」上のコミュニティのインフラをクラウドに移行 アマゾン・ドットコムのクラウド環境「Amazon Web Services」
事例(4) パルト・ホームズ(住宅建築) 基幹業務にSaaSを利用するもトラフィック増や社内システムとの連携に起因するシステムダウンを経験 明示なし
事例(5) フロリダ州マネジメントサービス局(州政府組織) 州のポータルサイトのFAQや車両管理のアプリケーションにSaaSを利用 ライトナウ・テクノロジーズの各種ツール、クローム・システムズの車両管理ツール「Carbook Fleet Edition」

事例(1)
インテバ・プロダクツ

米GM傘下の自動車部品メーカーであるデルファイ。その中で内装と開閉部品を扱う部署のCIO(最高情報責任者)に2007年9月に就任したデニス・ホッジス氏は、難題を抱えていた。同部署は6カ月後には分離独立し、インテバ・プロダクツという新会社として発足することになっていた。ホッジス氏は分離独立に際し、デルファイ社のIT環境のうち、同部署に関係する部分を抽出して、新会社のために用意する必要があった。会社から与えられた猶予期間は、たった15カ月しかなかった。

最初に取り組んだのは、全世界3400人の従業員が使用する電子メールシステムの移行だった。同氏はクラウドベースのサービスを利用することを決断し、インターネットサービスプロバイダーであるUSA.NETと契約した。結果、08年3月の分離独立後、わずか1週間でシステムが稼働した。USA.NETがすべてのストレージを管理し、すべてのソフトウェアのアップデートを行うため、同社のIT部門は面倒な保守作業からも解放された。

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