[河原潤のITストリーム]

Itaniumの今後はいかに?:第14回

2010年4月14日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

マイクロソフトが先ごろ、同社のサーバーソフトウェア製品において、インテルのItaniumプロセサのサポートを終了する方針であることを表明し、話題になっています。これは、米国マイクロソフトのWindows Server部門公式ブログの4月2日(米国時間)付けのエントリーで明らかになったものです。

 エントリーを記した同社シニア・テクニカル・プロダクト・マネジャーのダン・レーガー氏によれば、Windows Server 2008 R2とSQL Server 2008 R2、そして4月13日にリリースされたばかりのVisual Studio 2010が、Itaniumをサポートする最終バージョンになるようです。

 IA64アーキテクチャのItaniumが、2001年の発表当初にインテルが描いたエンタープライズサーバー市場での普及カーブをたどれなかったのはご存じのとおりです。これまでにIBMやデル、ユニシスといった大手サーバーベンダーがItanium市場から撤退し、ついに富士通も、3月31日に発表されたハイエンドサーバーの新シリーズ「PRIMEQUEST 1000」において、搭載CPUをXeonプロセサに切り替えました。このほかでは、レッドハットが2009年末に、現行のRed Hat Enterprise Linux 5を最後にItaniumのサポートを終了することを表明しています。

 こうして、Itaniumに対応したハードウェア/OSが次々と減っていったこの5、6年間で、x86アーキテクチャのXeonの処理性能と信頼性は大きく向上することとなりました。PRIMEQUEST 1000に搭載される最新のXeon 7500番台(開発コード名:Nehalem-EX)では、処理性能でItaniumを上回り、信頼性でもItaniumと同等レベルというのがセールスポイントになっています。

 このセールスポイントで、より重要な意味を持つのは信頼性のほうです。Xeon 7500番台では、これまでItaniumにしか搭載されていなかった「Machine Check Architecture Recovery」機能が備わったのをはじめとして、RAS(信頼性・可用性・保守性)機能が大幅に強化されています。Itaniumの存在理由とも言える高信頼性において(あくまでスペック上ではありますが)、とうとうXeonがそのレベルに到達してきたわけで、ベンダーとユーザーの双方にとって、Itaniumを選ぶメリットがまたさらに少なくなったと言えます。

 一方、インテルは現在のところ、Itaniumを終わらせようとは考えていないようです。2月には7世代目となるItanium 9300番台(開発コード名:Tukwila)を発表し、その後の開発ロードマップも明らかにしています。また、グローバルのハイエンドサーバー市場でIBMと首位を争うヒューレット・パッカードは現在、Itanium 9300を搭載した次世代の「HP Integrity」サーバーを開発中で、引き続きItaniumをサポートしていくことを明言しています。

 はたして、Itaniumのロードマップは今後も続いていくのでしょうか。言うまでもありませんが、今回のマイクロソフトと富士通の動きが業界や市場に与えるインパクトには非常に大きなものがあります。マイクロソフトがこれまで取り組んできた、Itanium版のWindows ServerやSQL Serverは、基幹システムにWindowsプラットフォームを採用する「エンタープライズ(ミッションクリティカル)Windows」という潮流を生み出しました。また、富士通のIAサーバーテクノロジーの集大成であるPRIMEQUESTは、今年初めに稼働が始まった東証の新株式売買システム「arrowhead」を筆頭に、ミッションクリティカルシステムでの稼働実績を多く有しています。

 スケールアウトを特徴とするクラウドコンピューティングの話題ばかりが語られる昨今ですが、スケールアップサーバーが求められる領域も依然として存在し続けます。ですので、Itaniumやそのポジションを引き継ぐであろうXeon 7500番台、あるいはPOWER、SPARCといったハイエンドシステム向けCPUをめぐる動きには、今後も注目したいと思っています。

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