大変革期を迎える中で、企業には野心的に将来を描いて関係者を巻き込みながら変革を進めることが求められている。その有効な手段になり得るのがオープンイノベーションや産学連携のコンソーシアム。しかしながら、実績につながるような取り組みは極めて少ない。その背景には、何があるのだろうか──。
世の中の変化が直線的ではないことが目立つようになってきた。いろいろな面で社会現象の二極化が表層化し、社会システムが飽和し停滞する一方でコンピュータを中心とするテクノロジーが指数関数的に進化し、地政学的には非線形な変化が日常的である。先行き不透明で不確実な時代になったことを肌身で感じるようになってきたとも言える。
環境変化の速度が速まる中で企業経営も「改善」から「変革」にシフトして事業構造、組織体制の思い切った革新が必要になり、伝統的な企業が大型でグローバルレベルの企業買収を行うことも珍しくなくなった。本格的なグローバル企業への変革ではアグレッシブなM&Aが必須の要件にもなっている。最近、とみに話題になってきたビジネス・トランスフォーメーションとは、こういった側面に現れている。
トランスフォーメーションはビジネスばかりでなく、広く産業や社会システム、経済活動にも求められる時代になった。農業改革はいずれJA全農に大きなトランスフォーメーションを求めるだろうし、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のような国際的な経済提携の枠組みも、紆余曲折しつつも構築されていくことだろう。こういう時代には従来の考え方や活動では仕組みを作ることができない。野心的に将来を描いて関係者を巻き込みながら変革を進めなければならない。
進まないオープンイノベーションやコンソーシアム
その有効な手段になり得るのがオープンイノベーションや産学連携のコンソーシアムである。しかしオープンイノベーションは掛け声ばかり勇ましく、実態がなかなか進まない。コンソーシアムも同業の集まりが多く、変革につながる力強さがない。産学共同は医療・創薬分野や素材分野や一部の産業では成果を上げているが、欧米のように活発な活動は見られない。
会員登録(無料)が必要です
- DXを推進するなら「情報システム部門」を根底から見直せ!(2024/10/30)
- 「建設DX」の実態と、厳しさを増す持続可能性(2024/10/02)
- 過剰なハラスメント意識が招く日本の萎縮(2024/08/27)
- 日本の死生観の変化がもたらす将来(2024/08/07)
- 銀行窓口業務の効率化、なぜ今もできない?(2024/06/24)