テクノロジの劇的な進化と普及によって、既存の勢力地図が大きく変わろうとしている。企業はデジタル化の波を捉えて、事業の再創造にアクセルを踏まなければならない。今、ITリーダーが念頭に置くべきことは何か─。最新動向に迫る記事を、特集としてまとめる。
「Digitization」から「Digitalization」へ
ITの進展は、時として従来からの勢力図に地殻変動を巻き起こす。広く知られる例としては、米国のレンタルビデオ・チェーンを展開していたBlockbusterの衰退がある。Netflixを筆頭に、ネット経由のストリーミングで映像コンテンツを配信するビジネス形態が主流となる中で、進退窮まり、ついには消滅した。
昨今の動きとしては、本特集でも随所にその名が出てくるUber(タクシー配車サービス)やAirbnb(宿泊マッチングサービス)の急進が目覚ましい。業界秩序や法規制といった枠の中で、競合の動きばかりを気に留めて戦っているうちに、突如として参入してきたスタートアップに市場シェアを奪われるといったことが、実際に起こり始めている。
FinTech、AdTech、HealthTech、SportsTech、EdTech…。今、さまざまな業界において、テクノロジが駆動する新しいビジネスが萌芽しようとしている。言うまでもなく、クラウドやモバイル、IoT(モノのインターネット)、ソーシャル、マシンインテリジェンスといったITの猛烈な進歩と普及、そしてコストパフォーマンスの向上といったことが背景にある。
こうした変化にさらされている中で、企業が目を向けるべき領域、裏を返せば、うかうかしていると他社に先行優位を許してしまう領域はどこかということを整理しておかなければならない。いわば、これからの主戦場だ。
図はIT化の取り組みにおいて、目的が「増力化」なのか「省力化(最適化)」なのか、対象が「社内」なの「社外」なのかを軸にとり、4象限で分類を試みたものだ。
これまでのIT活用は、既存のビジネスや業務をいかに効率化/合理化するか、従業員の生産性や結束力をいかに高めるかが主な焦点。「Digitization」として示して部分であり、すでに一巡したと見ることもできる。一方で、これまでは手薄であり、モバイルやクラウドなどの新しいテクノロジを駆使することで、ようやく具現化できるようになってきたのが「Digitalization」である。商品/サービスの開発から市場展開、さらにはユーザー体験までをも含んで首尾一貫してデジタルを適用するアプローチだ。
多くがまだスタートラインについたばかり。進む方向と“走り方”を誤らなければチャンスはある。2016年以降の指針を考えるにあたり、ITリーダーに是非目を通してほしい記事を厳選して本特集にまとめた。
「破壊者」と呼ばれる新興企業、斬新な発想とビジネスモデルで存在感を示す
ITを巧みに活用し、ユーザー指向の事業モデルで新規参入する企業が、米国を中心に存在感を示している。実際には、どのような企業がどのようなビジネスを展開しているのか。ここでは、米メディア大手「CNBC」が公表したリストに基づき、この3年間の主要プレーヤーを紹介する。
ガートナーからの提言 責任と自負を糧に表舞台へ
進化著しいITをビジネスの成長エンジンに──。デジタル時代を見据えた変革に、CIOはどのような問題意識で臨むべきか。米ガートナーの2人のアナリストが心得を説く。
「IoT時代にこそデータマネジメントの体制が問われる」
──米ガートナーのテッド・フリードマン氏
「CIOは“デジタルベンチャーキャピタリスト”を意識せよ」
──米ガートナーのデーブ・アロン氏
市場予測データから読み解くビジネス環境の近未来
ITを専門とする市場調査会社を中心に、2016年以降の注目トレンドや注力すべきテーマをまとめたレポートが発表されている。今、ITリーダーが頭に入れておくべき数字として興味深いものばかりだ。主要なものをピックアップして紹介する。
始動する「デジタル・ビジネス研究所」、経営とITを網羅する研修の中身とは?
高度情報通信人材育成支援センター(略称CeFIL、横塚 裕志 理事長)が、大手企業の経営幹部層を集め3日間に及ぶ「デジタルビジネス研修」を2015年11月末に実施した。果たして内容はどんなものか。経営幹部層を3日間も缶詰にした意味はあったのか?
海外カンファレンスレポート
グローバル展開する大手ITベンダーが、主に米国で開催する年次カンファレンスなどの大型イベント。最新ソリューションをPRする場ととらえるのは早計であり、基調講演をはじめとするセッションでは、今、企業のITリーダーが念頭に置いておくべきポイントが多く語られる。2015年秋以降に開催されたイベントの中から、主要なものを紹介する。ビジネス環境やIT業界のトレンドを把握する上で役立つはずだ。
- シスコシステムズ:「押し寄せるIoTの大波、企業はデジタライゼーションを急げ」─シスコ新CEOロビンス氏
- CAテクノロジーズ:日本企業の“アジャイル”への備えは万全か、米CAが打ち出す「Agile Management」が求めるスピード感
- セールスフォース・ドットコム:Dreamforce 2015で見えてきたSalesforceが目指す先、IoT軸にプラットフォームを統合・刷新し競合とも提携
- テラデータ:事業に絡むすべてのデータを集めて貯めて分析する「Analytics of Everything」を全方位で追求
注目ユーザー事例
グローバル展開やワークスタイル改革、そして高度なデータ利活用。様々なプロジェクトを完遂したユーザー事例には、多くの実践的ヒントが溢れている。
- IT組織のグローバルシフトとデジタル化―武田薬品工業
- 6000台がアクセスするモバイル基盤を整備─竹中工務店
- IoTを視野に商取引基盤をクラウドベースに刷新へ─ミスミ
- BI活用でグローバル拠点の課題を可視化―八千代工業
- 徹底した現場目線で営業支援ツールを開発―ジュピターテレコム
ITリーダー必読の連載シリーズ厳選10本
テクノロジー動向の把握や組織のマネジメントなど、ITリーダーに欠かせない実務的なポイントを、専門家が解説するIT Leadersの連載シリーズ。2016年以降のIT戦略を考える上で欠かせない10本を紹介する。